僕は、その会社の中でもナンバー2のグループに移動した。
現場に行くと、親方はいなかった。
別の現場に行っているらしい。
代わりに職長をやっていたのは、25歳の若い職人だった。
周りには、親方クラスの人もいる。
でも誰もやろうとしない。
その結果、経験の浅い25歳がやることになっていた。
見ていて、無理があるのはすぐにわかった。
それでも、その子は必死にやっていた。
僕が入って1ヶ月くらい経った頃だった。
その子は、来なくなった。
またかよ、と思った。
理由を聞くと、結婚して子供もいて、無理をしすぎたらしい。
限界だったんだと思う。
僕は、その子が壊れる前から、少しずつ話をしていた。
苦しそうなのがわかっていたから。
できるだけ、力になろうと思っていた。
でも、止めることはできなかった。
1ヶ月後、新年会でその子と会った。
少し話をした。
そのとき言われた。
「もっと早く会いたかったです」
その一言が、ずっと残った。
あのとき、その子は不安でいっぱいだった。
誰かに話を聞いてほしかった。
わかってほしかった。
でも、言えなかった。
無理して、耐えて、壊れた。
そのあとに、僕と出会った。
タイミングが遅かった。
それだけだった。
このとき、はっきり思った。
「こういう人を助けたい」
今まで、何人も見てきた。
うつになった人。
壊れていく人。
我慢しすぎて動けなくなる人。
自分の前で、6人。
もう偶然じゃないと思った。
みんな、頑張りすぎていた。
本当は、もっと楽に生きていいはずなのに。
人間に生まれてきて、幸せになるために生きてるはずなのに。
なのに、我慢ばかりしている。
おかしいだろ。
そう思った。
そのとき、なんとなくわかった。
自分がやるべきこと。
それは――
「人を助けること」
仕事じゃなくていい。
肩書きもいらない。
ただ、苦しんでる人の力になりたい。
そう思った。
でも、そのときの僕は――
自分のことでいっぱいいっぱいだった。
頭がおかしくなったみたいに、体が動かなくなった。
何日か休んで、なんとか戻った。
でも、何も考えられなかった。
そんな状態で仕事をしていたある日。
朝、トイレに行って振り返ったとき――
そこにいたのは、
昔、一緒にやっていた最初の会社のメンバーだった。
全然違う会社なのに。
たまたま応援で来ていたらしい。
「元気してるか?」
そう声をかけられた瞬間――
涙が出た。
理由はわからない。
ただ、安心した。
その日、久しぶりに一緒に仕事をした。
自然だった。
無理がなかった。
「ああ、これだ」
そう思った。
これは偶然じゃない。
そう感じた。
迎えに来てくれたんだと思った。
僕は、戻ることにした。
いろんな会社を見てきた。
いろんな人に出会ってきた。
たくさん苦しんでる人を見てきた。
そして、自分も壊れかけた。
その中で、やっとわかった。
自分はどう生きたいのか。
これからは――
ちゃんと自分と向き合って、
人の役に立てることを形にしていく。
そう決めた。
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【最終話】戻ってきた理由と、これからの話|自由を作り続ける男の記録

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【第0話】現場で倒れて、独立を諦めました|それでも今、こう考えています


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