その日は、いつもと同じ現場だった。
特別なことは何もない。
ただ、いつも通り仕事をしていた。
でも、違和感はあった。
頭が重い。
体がうまく動かない。
それでも、無理して動いた。
「これぐらい、大丈夫だろ」
そう思っていた。
次の瞬間だった。
立っていられなくなった。
頭に、強い痛みが走る。
まるで――
槍で何度も突き刺されているような感覚だった。
その場にしゃがみ込んだ。
息がうまくできない。
視界が揺れる。
気づいたら、涙が止まらなかった。
痛いのか、苦しいのか、悔しいのか。
自分でもわからなかった。
そのあと、嘔吐した。
体が完全に限界を超えていた。
病院に行った。
診断はシンプルだった。
「過労です」
2週間、自宅待機になった。
何もできなかった。
体が動かない。
頭も回らない。
でも一番つらかったのは――
動けないことじゃなかった。
「何もできない自分」
それを突きつけられたことだった。
ベッドの上で、ずっと考えていた。
今までの自分は、何をしてきたんだろう。
頑張ってきた。
逃げずにやってきた。
つらいことも、全部受けてきた。
でも――
その結果がこれなのか。
「これ、全部無駄じゃん」
そう思った。
心のどこかで、
誰かに認められたかった。
お金ももらえると思っていた。
でも現実は違った。
いくら頑張っても、給料は変わらない。
どれだけ現場を回しても、
手柄も、実績も、信用も――
全部、親方のものだった。
何のために頑張っていたんだろう。
初めて、自分の人生を考えた。
このままでいいのか。
答えは、出なかった。
でも一つだけ、はっきりしていた。
このままじゃ、ダメだ。
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【第5話】稼げたのに、全部違った


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