柱・壁・梁・スラブが繋がる全体の流れ
型枠拾い出しシリーズ、いよいよ最終回。
これまで「柱」「壁」「梁」「開口」と順に進めてきましたが、今回はスラブと全体のまとめです。
柱からスラブまでの流れを一枚の加工図にまとめることで、建物全体のつながりを理解できるようになります。
拾い出しを“作業”から“理解”に変える、最後のステップを一緒に見ていきましょう。
スラブの種類と特徴を知る


スラブにはいくつかの種類があり、構造や支保工によって拾い出しの考え方が異なります。
代表的な3つを軽く整理しておきましょう。
・ 在来スラブ:梁・支保工で受ける一般的な構造。段差や桟木の配置を考慮する。
・ ペコビームスラブ:ビームで受けるため、梁との取り合いが重要。高さ・受け方向を明確にする。
・ デッキスラブ:鋼製デッキの上にコンクリートを打つ構造。型枠の拾い出しは少ないが厚み確認が必要。
スラブの種類を理解しておくと、拾い出しの流れがスムーズになります。
スラブの拾い出し手順

①ベニヤの種類と向きの確認
ベニヤの種類の選び方
・転用する場合は →2×6(600×1800)
軽くて小さいので荷上げ作業が楽だからです
・1回だけの使用は→3×6(900×1800)
大きいので張る枚数が少なくて済むためです
大引の向き
スラブの長手方向が大引の向き=ベニヤの向き(長手方向1800)
大引きを短手方向にするとやりづらく、手間がかかるため。
②段差や跳ね出しスラブの確認

段差枠をつけるために、60大面にする
跳ね(はね)出しスラブとは?
通常のスラブは梁側などにベニヤが乗るのですが、片側に型枠がない場合のスラブのこと(梁←ベニヤ→外部)
③スラブと段差枠のイメージ図

拾い出しをするスラブと段差枠の簡単なイメージ図を描く
④スラブの外寸と段差枠の寸法を出す
図面から寸法を計算してイメージ図に書く
⑤ ベニヤ割付(補助の計算)
真物(1800×600や900の定尺ベニヤ)を並べて残りの寸法を出す(補助ベニヤ)
ポイント
450以下の補助ははじっこに張らないで1つ手前に張りましょう
100以下の補助は小さすぎて上に乗ると割れてしまうので、700のベニヤにしたりして、張って下さい
⑥番付のつけ方
スラブの番付を図面の通り芯で書くと大変なので各スラブごとに番号を振って番付にする。
スラブの加工図に柱の番付を書くだけで、どこのスラブなのかが、わかりやすいのでおすすめです。
柱→壁→梁→スラブの“つながり”を整理する

各部材は独立しているように見えて、実はすべてが連動しています。
建物が立ち上がる順番を意識しながら、図面上で整理していきましょう。
・ レベル:シキサンをして型枠がどの高さから取り付けるのかを決める
・ 柱:柱が建物の骨格をつくる。大面小面に気をつける
・ カベ:壁が柱をつなぎ、開口で抜けが生まれる。型枠の転用、解体方法に気を配る
・ ハリ:梁が壁の上にかかり、スラブを受ける。スラブがデッキやペコの場合は梁側の強度に気をつける
・ スラブ:スラブが上面を形成し、建物全体が完成する。
この流れを理解できると、拾い出しが“点”から“線”、そして“面”で見えるようになります。
まとめ|拾い出しは「建物を頭の中で立ち上げる技術」
今回の「スラブと全体まとめ編」で、拾い出しの流れがすべてつながりました。
柱・壁・梁・スラブの関係を理解できれば、図面を見るだけで建物が立ち上がるイメージが掴めるようになります。
拾い出しは単なる数量取りではなく、建物を頭の中で組み上げる訓練です。
このシリーズが、これから図面を学ぶ人・教える人の“現場の教科書”になれば嬉しいです。


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